t-yamaguchiの日記

書評や、気になったことをブログや日記に書きます。

勝ち続ける人は、なぜ“勝ち”を目標にしないのか

はじめに

この日記を書いている現在、ミラノ・コルティナ冬期オリンピックが行われている。
オリンピックでは、1位だけでなく、2位や3位にもメダルが贈られるため、1位以外にもきちんと価値が認められていることが特徴だと言えると思う。

しかし、私が著書やYouTubeなどでその言動をウォッチしている落合博光氏は、自身の著書である『采配(さいはい)』の中で、次のように述べている。

「勝負の世界においては、一番と二番には、天国と地獄にたとえられるほどの差がある」

確かに、オリンピックにおいても、金メダルと銀、銅のメダルの価値には大きな違いがあると言われることがある。
しかし、1位を取らなければ価値がない、金メダルだけが意味を持つ、と考えることは、選手にとって大きな精神的負担になるように思われる。

今回のオリンピックでも、男子フィギュア・スケートの第一人者で「王者」と呼ばれていた選手が大失敗をし、金メダルだけでなく、メダルそのものを逃す結果に終わってしまった。
やはり、「勝つことが当たり前」「金メダルの最有力候補」というプレッシャーは、並大抵のものではなかったのであろう。

そんな中で、おそらく他の選手とは異なる考え方で高いパフォーマンスを維持し続け、長期にわたって「1位」を維持したスポーツ選手が、かつて存在した。

今日はその話をしてみたい。

 

1.「いつも2位を狙っている」と語ったトップアスリート

その選手は、「いつも2位を狙っている」と公言していた。
その選手とは、女子プロゴルファーの不動裕理さんである。

不動さんを知らない方もいると思うので、簡単に紹介しておこう。
不動さんは、2000年から2005年までの6年連続で日本女子ゴルフツアーの賞金女王(賞金ランキング1位)となり、マネークイーンの称号を保持し、国内での優勝回数50回を誇る、「レジェンド」と言ってもよい名プロゴルファーである。

そんな不動さんが全盛期に、「優勝を狙わずに、いつも2位を狙ってゴルフをしている」と発言していたのである。

不動さんがこのように発言する背景には、プロゴルフツアーにおける独特の賞金システムがある。
プロゴルフツアーでは、2位は1位のおよそ半分の賞金を得ることができる。他の競技では、2位の賞金が「1位の何分の1」であることが多い中、これはかなり異例の配分だと言える。

さらに、プロゴルフツアーでは、各トーナメントの順位や賞金も重要だが、最終的にはシーズンを通じた獲得賞金総額が重視される。賞金女王もそうだし、翌年のシード選手も獲得賞金総額で決定される。
こうした独特の評価制度があることも、大きな要因である。

不動さんは、普段は「2位を狙う」という姿勢で臨み、調子が良かったり、1位の選手が崩れたりした時に初めて1位を狙いにいく。
その心構えが、彼女を6年連続の賞金女王に導いた、というのである。

 

2.「2位を目指す」ことがもたらした合理性

私は、不動さんの思考方法が、決して「敗北主義=最初から負けることを考えている」ものではない、という点が特に重要だと考えている。

2位を目指すことでリラックスし、できるだけ平常心に近い状態で競技に臨むことで、緊張によるパフォーマンス低下を防ぐ。
これは、極めて合理的な方法なのである。

不動さんは当時の第一人者であり、常に優勝が期待される存在だった。
「いつも2位でいい」というスタンスで試合に臨むことで、そのプレッシャーに打ち勝つことができたと語っている。

私は、不動さんの言う「2位を目指す」ことのメリットに、もっと多くの選手が気づくべきではないかと考えている。

すでに1位を獲得した人が、「1位でなければならない」と語る気持ちは理解できる。
しかし、現役の選手に対してそうした言葉を投げかけることは、無用なプレッシャーを与えることにもつながるのではないだろうか。

不動さんはかつて、「どうして、他の選手は2位を目指さないのか、不思議です」と発言していた。
この言葉はあまり注目されなかったようだが、いつの時代にあっても、見直されてよい考え方ではないかと思っている。

 

おわりに――勝ち続けるために

スポーツ競技は近年、非常に高い人気を誇り、ビジネスとしても注目されている。
その中で注目を浴びるスポーツ選手は、さまざまな重圧を背負いながら戦っており、そのプレッシャーは計り知れないものだろう。

決して比較できるものではないが、私は高校時代、スポーツ競技ではないものの、団体戦で「優勝しなければならない」というプレッシャーの中で戦った経験がある。
幸い結果として優勝することはできたが、かなり胃が痛くなる思いをした。

たかだか高校生の戦いでさえそうなのだから、金メダルを目指すようなハイレベルな戦いにおけるプレッシャーは、想像を絶するものだろう。

私のようなレベルであっても、「2位でもかまわない。全力を尽くせばいい」と考えて臨めていれば、もっと楽な気持ちで戦えたのではないか、という思いはある。
そう考えると、「2位を目指す」という考え方は、やはり見直されてもよいのではないかと、私は考えている。